2026年6月3日水曜日

秋元千惠子歌文集『想夫恋』

秋元千惠子さんのここ数年の短歌とエッセイを集めた歌文集『想夫恋』が洪水企画から出た。四六判上製、152ページ、税込2200円。発行日6月3日は6年前に亡くなった夫の貞雄さんの命日。「想夫恋」とは妻が夫を恋慕する琴歌があって、その思いを構想の手引きにしたとのこと。



準備に半年、編集に半年くらいかかった、長丁場の制作プロセスを経た一冊。

2021年刊行の作品集『生かされて 風花』以降の短歌作品とエッセイを収める。併せて、亡き伴侶・秋元貞雄のエッセイ5篇、これまでの歌集に収録されていないごく若い頃の短歌、最近歌誌「沃野」に掲載されたインタビューも収録。これはテレビ局に勤める歌人の武藤裕美さんが取材して記事にしたもので、とても上手にまとまっている。そして跋文に当たる文章は、俳人の北大路翼さんの「深なさけに感謝しつつ」。

今年の春に書かれた短歌の最新作〈無韻の館〉28首はここに収録した短歌作品の中でも力が漲っていて荘重な感じがある。そこから五首抜粋する。

 春ながら口つく侘び歌 人類の悪さ果なし 霏々と降る雪

 差し水に項を正すシクラメン現し身われのいのち渇くも

 創世ゆ生命の連鎖憶うべし希有にし生れしを危めるなかれ

 瀕死なる地球を診ずや 為政者の命運尽きるも 短歌は活きよ

 令和はや募る災禍よ俯瞰するビル累々の戦火の墓標


(池田康)

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