政治の世界が騒がしい。解散ボタンは総理大臣の執務室に設置してはならない、設置するなら富士山よりも高い場所にすべしと一級建築士の奥義の巻物に明記しておいてほしいものだ。そもそも政治家はラインの黄金の存在を信じる人たちだから、錯覚であれ黄金の光がかすかにでもちらつくと騒がしくなるのは致し方ないのかもしれないが。
一昨日、ワーグナーの「ラインの黄金」鑑賞会を盛大に、ではなくごくごく少人数で行った。アルベリヒの呪い、ローゲの寸鉄が鋭く尖った。二次会で話題になったのだが、新国立劇場での新作プロダクションはぜひテレビ放映してほしいものだ。WOWOWはメトロポリタン歌劇場のライブビューイングを全部ではないがいくつか選んで放送しており、新作は積極的に取り上げている。NHKも(民放でもいいが)新国立劇場の新たな成果を紹介する労の価値を検討してほしいものだ。
夢野久作の時代小説五篇を集めた『妖刀地獄』(河出文庫)をいま読んでいる。その中の一篇「名君忠之」に「……天下の勢を引き受けて一戦してみようと仰られる事は必定じゃ。大体、主君の御不満の底にはソレが蟠まっておるでのう。その武勇の御望みが、御一代押え通せるか、通せぬかが当藩の運命のわかれ道……」という一節があった。なんだか焦ったい気がしないでもないが、そのような処世の思考法もあるのかと学んだことだった。
(池田康)



